秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~
目を向けると同時にドアも開かれ、私は慌てて緩んだ表情を整える。
入ってきた女性社員ふたりと「お疲れさま」と言葉を交わしつつ、何気なさを装いながら翔悟さんに『はい!』と返事をし、……やっぱり嬉しくてこっそりと笑みを浮かべた。
慌ただしく会社を出て、昼も通った公園の小道を進んでいく。そしてたどり着いたのも同じく昼に食事をした洋食屋。店内は、この付近で働くOLたちでがやがやと騒がしかった昼間とは打って変わって、教科書を広げて勉強中の学生や、スマホに視線を落としながら黙々と食事をとっている人々が多く、落ち着いた雰囲気に包まれている。
窓際の空いている席に腰かけたのち、注文したカフェモカを飲みつつ、ぼんやりとスマホや窓の外を眺める。
すっかり落ち着いてしまったけれど、翔悟さんの言う「いつもの場所」とはここではない。
この店は、彼が仕事を終えて迎えに来てくれるまでの待機場所としてよく利用しているのだ。
ロッカールームで彼のお誘いに返事をし、ここに到着するまでに、彼から『あと三十分で終わらせる。すまないが時間を潰していてくれ』と新しいメッセージが届いている。
胸を高鳴らせながら待つ三十分なんてあっという間。私はそわそわしながら窓の外の車の流れを見つめた。