秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~
そして言葉通り、彼がメッセージをくれてから三十分後、ちょうど見える位置に黒色のスポーツタイプのセダンが停車した。
急いでバッグと伝票を掴み取り、椅子から立ちあがる。すぐさま会計を済ませて、店を飛び出した。
「翔悟さん!」
路肩に停車した車から降りてきた彼に呼びかける。思わず駆けて行ったからか、私を捉えた彼の目がわずかに大きくなる。
「待たせてしまったようだな」
「いいえ。時間ぴったりです。今日もお疲れ様でした」
そう言って笑いかけると、翔悟さんの目元がほんの少しだけ柔らかくなったように感じられた。
「ありがとう。さぁ、乗ってくれ」
「はい!」
彼の言葉が合図となって私たちは車に乗り込んだ。
私がシートベルトを装着したのをちらりと確認したのち、彼がアクセルを踏む。
静かに走り出した車内で二人っきり。心待ちにしていた瞬間なのだけれど、何回体験してもなかなか慣れない。
翔悟さんが隣にいる。秀麗眉目な彼と地味な私。付き合ってもう一年が経とうとしているのに、いまだに恋人同士だという事実が夢のように思えて仕方がない。
「どうした?」
「いえ。なんでもないです」
「そうか。腹が減ったのか」
「違います。お腹は空いてません」