秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~
私はテーブルのすぐそばまで歩み寄りはしたけれど、向かいの席に腰掛けることはしなかった。気持ちで負けるわけにはいかないと、ただ真っ直ぐに会長を見つめる。
「翔悟さんのこと、ですよね?」
「えぇもちろんよ。どんな手を使ってあの子をたぶらかしたのか聞かせてもらおうと思って」
「たぶらかしてなんていません!」
ムキになって言い返すと、会長はたいして面白くなさそうに薄く笑みを浮かべた。そして会長の眼差しで合図を送られ、私をここまで連れてきた女性が別のテーブルに置かれていたファイルを手に取り、機敏に差し出してきた。
「それを見てちょうだい」
受け取ったファイルと会長を交互に見てから、そっと表紙を開く。挟み込まれた何枚かの紙を見て、「これは」と動揺で声を震わせた。
私の履歴書と併せて、家族構成などを事細かに書き込まれた報告書のような書面があり、それの後に綺麗な女性の写真、そして彼女のものと思われるざっくりとした報告文が続いた。
女性の顔には見覚えがあった。以前、会社の一階で、翔悟さんと共に歩いていたあの彼女だ。藪内さん。広告代理店といえば必ず名前が上がる、ヤブウチホールディングスの取締役社長のご令嬢。