秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~


「これが翔悟の……ヒルマ物産跡取りの嫁に求めるものです。創始者である祖父が大切に育ててきたヒルマ物産を継ぐ以上、翔悟も結婚は会社のためでもあるということを理解するべきなのです」


彼女に対する報告内容はざっくりとしたものだが、高学歴だったりヤブウチホールディングの役員のひとりに名を連ねていたりと、圧倒されるほど華やかなものばかりだ。私の経歴と並んでいるから余計にそう見えるのかもしれないけれど。


「亜裕子さん以上にふさわしいものをあなたは持っていますか? もちろんヒルマ物産の強みになるものですよ。調べ漏れがあるのなら、今ここで聞きましょう」


私にはそんなもの何もない。悔しくて唇を噛むと、再び会長が秘書の女性に視線を送った。今度は社名入りの長形の封筒を渡される。手にした瞬間中身に気付いて、怒りで我を忘れそうになった。


「……いったい何を考えているのですか?」

「これで翔悟から手を引きなさい」

「嫌です! お返しします!」


封筒を力任せにテーブルに叩きつけると、開いた口から現金がわずかに飛び出す。


「あなたが翔悟に近づいた目的はこれでしょ?」

「違います!」

「……そう。手を引くのにこれでは足りないということね。この倍ではどう?」

「いい加減にしてください!」


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