秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~
ずっと彼の顔を見つめていたため、翔悟さんに勘違いされてしまった。力いっぱい否定した私とわずかに視線を通わせ、彼は再び口を開いた。
「それなら何か言いたいことがあるのか? 不満なら聞こう。遠慮なく言ってくれ」
「いえ、そう言うことでもなくて。……ただ見ていただけです」
「……なるほど。俺を見たかっただけか」
繰り返され、恥ずかしさで一気に顔が熱くなる。
翔悟さんが照れたそぶりでも見せてくれたらそこから話を広げて顔の熱を知らんぷりできたのに、彼がいつも通り顔色一つ変えぬまま黙ってしまったから、なんだか居た堪れない。
しかし、車が軽快なスピードで信号を三つほど通過した頃、ハンドルを握る彼の指先が軽くリズムを刻んでいるのに気付き、もしかしたら上機嫌なのかもしれないと予想する。
表情を見る限り、下手をすると不機嫌にも見える。翔悟さんは本当にわかりにくい人である。
けれど、そこもまた魅力の一つに違いない。彼の喜びを感じ取れたことで、今私はすごく嬉しくて幸せな気持ちだ。
互いに上機嫌のまま、車が走ること二十分。私たちは目的のお店に到着する。
「あぁ会いたかったよ! 本当に可愛い。可愛すぎる」