秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~
「なんですか?」
不機嫌なままドアを開けたけれど、彼女は特に動揺した様子もなく、お辞儀をする。
「退職届けの提出を見届けるよう会長から言われましたので、迎えにあがりました」
「……やっぱり退職しなくちゃダメですか?」
「申し訳ありませんが、会長はあなたには副社長のそばにいて欲しくないようです」
「翔悟さんと別れたくないです」
ぽつりと思いを口にすると女性はほんの一瞬困った顔をし、「無理ですよ」と答えるかのように苦笑いで肩を竦めてみせた。
仕事だけじゃなく翔悟さんとのことも、諦めるのが当然といった様子で勝手に話が進んでいく。跳ね除けられなくて、非力さに胸が苦しくなる。
秘書の女性が周囲を気にしてから、「中に入ってもよろしいですか?」と私に断りを得て玄関に足を踏み入れた。しっかりとドアを閉じてから、再び私へと体を向ける。
「お子様についてですが、どのようにお考えですか?」
「産みたいという気持ちは今も変わりません」
はっきり告げると女性は軽く頷く。