秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~
秘書の女性に会長の姿が重なって見え、ものの見事に誘導された気持ちになる。きっと最初から、私にこの二枚にサインさせるのが狙いだったのだろう。
誓約書を見つめて立ち尽くす中、ベッドの上でスマホが鳴った。秘書の女性を玄関先に残して、私は音に引き寄せられるようにふらふら歩き出す。
画面を見て、どきりとする。電話をかけてきたのが翔悟さんだったからだ。誓約書と交換するようにスマホを手にとり、緊張気味に秘書の女性をちらり見た。
彼女は私の表情から相手が誰か分かったのだろう。咄嗟に何か言いかけたが、それよりも先に、私は彼からの電話を受けた。
「はい」
「おはよう。忙しい時間に申し訳ない。どうしても穂乃果の声が聞きたくなって」
「翔悟さん」
彼の声を聞いた途端、胸に温かさが広がった。と同時に、会いたくてたまらなくなるけれど、秘書の女性が見ている前で甘えられない。
「穂乃果と話していると心が落ち着く。商談もうまくやれそうだ」
「……そう言ってもらえて嬉しいです」
「すぐに会いに行けないと思うと、余計に顔が見たくなる。たった三日でも辛いな。明日が待ち遠しいよ。早く会いたい」