秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~

いくら恋人関係であっても、私にとって副社長としての彼は文字通り、雲の上の存在だ。いつも私は、手の届かない遠い場所から彼がそばに降りてくるのを待っていて、決して私から彼の所に上がっていくことはできない。

けれど、彼女は違う。彼と肩を並べて仕事ができるのだから。そこまで考えて、私だけ住む世界が違うのだとやっと気がついた。翔悟さんと同じ景色を見ている彼女が、ただただ羨ましかった。

好き。その気持ちだけじゃ、彼女に敵わない。

さっきとは逆に、握りしめていたスマホとベッドの上の二枚の誓約書を持ち替えた。紙面をじっと見つめながら、秘書の女性に話しかける。


「会社は辞めます。それと子供に関する誓約書にサインをしても良いと思っています。けど、翔悟さんについてはもう少し時間をください」


出産に向けていずれ会社は辞めることになるため、それは今でも別に構わない。赤ちゃんを奪わない約束となるのなら、後継者問題に関する誓約書にはサインする。

けれど、彼には私よりもふさわしい女性がいると理解した上でも、やっぱり翔悟さんを諦めるのは簡単ではない。


「すみませんが、時間はあまりありません」


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