秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~

きっとそろそろ女性秘書が私を迎えに来る。でも私は、何もできないまま終わりにしたくない。翔悟さんと直接会って、話がしたい。

そうだと思いついて、バッグを引き寄せて中からカードキーを取り出す。ここを抜け出すなら今のうち。翔悟さんの家に逃げ込んで、彼が帰ってくるのも待とう。

心が決まると、今までぼんやりしていたのが嘘のように行動が早くなる。軽く足音を響かせて玄関に向かい、靴を履きながら放置していた私の荷物が入った大きな箱に視線を向けた。

ふっとある物に気付いてギョッとする。隠すように忍ばせられていたそれは、ヒルマ物産の社名などが印字された厚みのある封筒。ここ最近、同じものを目にしている。

嫌な予感を覚えながら恐る恐る手にとり、あぁと嘆きたくなった。間違いなくそれは喫茶店で会長と会った時に手渡されたのと同じ物だった。

このお金は受け取れない。翔悟さんへの自分の思いまでも裏切ることになるからだ。拒否するように、封筒を荷物の上に戻し、私は家を飛び出した。

警戒しながら足早に駅へと向かい、電車に飛び乗って一息ついたところで、バッグの中でスマホが振動する。翔悟さんかと思い微笑むも、表示されている番号は見知らぬものだった。

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