秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~

決意がぐらぐらと揺れ始め、彼のマンションに行くのが怖くなる。会って今見たことを問いただしたら、「俺はヒルマ物産のために、彼女と結婚することにした」と決意を打ち明けられるかもしれない。だからと言って自分の家に戻ってしまったら、彼と話す機会すら持てずに全てが終わる。

どうせ終わるなら、翔悟さんから直接引導を渡された方が諦めもつくだろうかと歩き出すも、彼のマンションを目の前にした途端、私は完全に動けなくなる。手にしたカードキーをじっと見つめていると、スマホが再び振動した。着信は先ほどと同じ見知らぬ番号からで、諦めと共にそれを受けた。


「大畑さん、ですね。繋がって安心いたしました。今、いったいどこにいらっしゃるのですか?」


かけてきた相手は、やっぱりあの女性秘書だった。


「気晴らしに外に出たくなってしまって」

「そうですか。……おひとりですよね?」


恐る恐るの問いかけに、「はい」と答えると、小さく安堵のため息が聞こえた。


「どのくらいでお戻りになりますか? 今いらっしゃるところまでお迎えに上がることも可能ですが」


視線をのぼらせて、翔悟さんのマンションを見上げる。つい黙り込むが、「大畑さん?」と呼びかけられ、私はそれに背を向けるように踵を返した。

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