平凡な私の獣騎士団もふもふライフ
※※※



一頭の獣が山を駆けている。白い毛並みを揺らし、たくましい四肢を動かせ、美しい紫色(バイオレッド)の目はただただ前方を見据え続ける。

――ああ、この脚が、もっと速ければ。

土を抉り、木の根を爪で傷付けながら、その獣はただひたすら走る。

もし今の自分に、岩を噛み砕くほどの力があったなら。もしくは雷光のごとく風になって大地を駆け抜けられれば……あるいは空を駆けられたのなら。

そうであったのなら、簡単に助けられたのではないか、と。

速く、はやく、もっと速く走るのだ。

魔力で守られてもいない四肢の先が、ただの獣と同じ柔さでもって傷付くのを感じる。それでも構わず、鼻先や身体に土汚れを付けたまま大地を駆けた。

一頭の獣が、暴走したかのように猛然と走る。

唐突に町に飛び出してきた彼を見て、人々が「野生の白獣が出た!」と悲鳴を上げて逃げ出した。しかし、彼は脇目も振らず、只一人の人間の匂いを辿って大騒ぎな町中を駆け抜ける。

助けたい、助けたいモノがいる。

速く、早く、はやく――。

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