平凡な私の獣騎士団もふもふライフ
先程、ジェドのもとから出た後で自己紹介をし合った。その際にコーマックは、敬語口調は癖のようなものなので、ともリズに教えてくれていた。

なんて礼儀正しく誠実な人なのか。

そんな感想もあって、こんなにも高給取りの地位にいる結婚適齢期なのに、とリズの同情はガツンと増したのである。しかも本館の宿泊部屋に引っ越す、リズの少ない荷物も持ってくれている。

「そもそも、どうして『恋人同士かも』なんて噂を放っておいているんですか?」

「実はその頃、断るには面倒なところから政略結婚の話が出ていたんです」

うーん、と思い返す表情でコーマックが言う。

「グレイソン伯爵家は、『白獣に認められた領主』としても有名でして、それをきっかけに負けてなるものかという勢いで、次から次へと大貴族らからも縁談話が」

当時を思い返したのか、彼の副官であるコーマックが溜息で言葉を切る。本館の敷地と繋がっている鉄の門が見えてきた。

「うわぁ……貴族って、大変なんですね」

「先に婚約だけでも、という貴族側の事情も分からなくもないのですが、何せ相棒獣も不在でした。これは仕方ないかな、と団員全員で一役演じることにしたわけです」

言葉で偽れば罰せられる可能性がある。だから一時、態度と雰囲気でそれらしい感を作り出したところ、女性達は見事に勘違いを強めたという。

それが、あっという間に貴族界へと伝わって今に至る、と。

コーマックは諦め声で説明しながら、鉄の門をくぐって中へと進んだ。今は仕事を押すような縁談話や手紙の殺到もないが、時間の問題だろうとも彼は語った。
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