平凡な私の獣騎士団もふもふライフ
「それじゃあ、また明日」

そう声を掛けて、くるりと踵を返した直後、肩にガシリと重量感のあるデカいもふもふの片前足を掛けられた。

なんかデジャヴだ。引き留められたと分かって、恐る恐るリズは振り返る。

「…………なんか、団長様が苛々している時と似ているような……」

そこには紫色(バイオレット)の鋭い目で、こちらをギロリと睨み下ろしている白獣がいた。

気のせいか、不機嫌マックスで黒いオーラを背負っている。一体何かしただろうかと考えたリズは、直前までの会話を思い出してハタと気付いた。

「……もしかして、仮でも名前を付けてってこと……?」

尋ねてみると、白獣が前足を下ろしてこくりと頷く。

呼び分けが難しいと口にした際、不便であると彼なりに感じ取っての事なのだろうか。何せ、こちらを悠々と小馬鹿に出来るくらい賢いらしいし――。

リズは幼獣にも下認定され、野良白獣には馬鹿にされている自分を思った。なんだか「私って一体……」と虚しさを覚えたものの、彼の賢さは素直に感心してもしまう。

「そうね、ニックネームを考えましょうか……。『ダグラス』は?」

パッと浮かんだ名前を投げたら、首を横に振られてしまった。

「じゃあ『ノラン』?」

これもまた、お気に召さなかったらしい。まずいものでも食ったうえで、こけおろすような表情を向けられてしまって、リズはしばし返す言葉で出なくなった。

この野良の白獣、人を馬鹿にする方向でやけに表情豊かじゃない?

これはきちんと考えないと、延々と精神的ダメージのくる反応をされそうだ。彼らしい名前、とリズは呟き、真剣になって考え込んだ。

しばし、その様子を正面から暴れ獣がじっと見つめていた。

「…………それじゃあ……、『カルロ』」

なんだかピンときて、リズはそう提案してみた。不思議と口にしっくりとくるピッタリの名前である気がした。

すると、その白獣がぴくっと耳を立てて――よろしい、と言わんばかりに胸を張って座り直すと、満足げに「ふんっ」と高らかに鼻を鳴らしたのだった。

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