平凡な私の獣騎士団もふもふライフ
直後、暴走でも起こしたかのように白獣が動き出した。

彼女の方へ向けて一直線に猛進するのを見て、ジェドは心臓が止まり掛けた。

間違いない、奴の目はずっとリズに向けられ続けている。あの白獣は、彼女目掛けて走っているのだ。

考えてみれば彼女は獣騎士ではない。

ああ、なんてことだ、とらしくなく彼は全力で必死に駆け出していた。

野生の白獣は、下山するという不慣れな環境でピリピリする。だから敷地内に入れる際、ここなら獣騎士しかいないと説明して安心させてから促す。

だが、そこにリズという非獣騎士の『他の人間』がいた。

そうであれば、テリトリーを害されたと暴走してもおかしくはない。白獣は獣騎士以外には牙を剥く。脳裏に過ぎったのは、彼女が食われてしまう光景だった。

「リズ!」

咄嗟に真っ先口から出たのは、獣に対する制止でも部下達への指示でもなく、彼女の名前だった。

ああ、どうか頼むやめてくれ。傷付けないでくれ――まるで半身を抉られるような痛みで息も出来なくなった。

すると不意に、彼女が勝手に転倒してしまうのが見えた。

「ッあの馬鹿!」

なんでこんな時に、と思ったジェドは、白獣が飛びかかりもせず引き続き走って向かっている様子に違和感を覚えた。
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