あいつがいない世界で。
あいつが居なくても、結局世界は何も変わらずに動いていく。

あいつがいない世界で、誰しも普通に生きていくだけなのだ。

今、ほんの少しだけの喪失感を持っていても。



桜が散って、若葉が生まれる。

誰かが死んでも、誰かが生まれる。

そうやって、世界は回るから。

時間は流れていくものだから、あいつがいなくたって、みんな普通に生きることが出来る。

一年経ったらまた、桜が見られるのと同じように、地球が回っているのと同じように。

何事も全ては回ってくるのだから。

いつも隣に立っている死が、今は影を薄くしていても、いつかその影を濃くして襲いかかってくることがあっても。

それまでは、その存在を忘れているから。そうやって、回っていくのだから。

永遠にこの時間が続くわけではないのに、いつもそうやって感じて、死を忘れて生きていく。

いつかその日が来たって。

三組の高尾が死んだ。

だからといって、この世界が大きく変わるわけでもなく、私たちはこれまで通りに生きていく。

何事も無かったかのように。ただ、これまで通りに、死を忘れて生きていくのだ。


《END》
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