諦めた心

今日俺は、
亡くなった義兄の
墓参りにきていた。

あれ、一華ちゃん
じゃないか

と、思って
近くにいくと

男が、一華ちゃんに
近づき、声をかけた。

一華ちゃんは、
怯えた目をしながら
ふるえているのがわかった。

« 危ない »
と、思ったとき
「いちか!!」
倒れていく彼女を抱き締めた。

俺の腕の中で意識を無くした
彼女を抱きあげて
男をみた。

「あんた、大賀 怜か?」
「そうだが、あなたは?」
「俺は、奥菜 哲也、弁護士だ。
それに日和も一華ちゃんも
俺には大事な人だ。
ああ、例の事件で日本にいるのか
だが、お前は、達彦さんの
墓にも近づかないように
日和に言われていたんじゃないのか?」
と、言うと
大賀は、ギリッと歯を食い縛り
「知ってるんだ、あんた。」
「まぁな。
何度も何度も、一華ちゃんを
傷つけて、お前、人間じゃないわ。
もう少し罰を与えたら良かったのだが
あの時は、一華からも日本からも
でていってもらえばよい
と、思っていたからな。」
「あんたの仕業か。
 法的に訴えてやる
    あの学長も。」
「やれるならやってみろ。
返り討ちにしてやるわ。
あの時、なにもせずに
日本からだしてやったのに。
俺を甘くみるなよ。」
と、言うと
「俺には、なんら落ち度はない。」
「本当に、お前はバカだわ。
何にも知らずに。
そんなお前の弁護を受ける人が
気の毒としか思えない。」
「なにを」
と、大賀が怒りで顔を曲げた時·····

「ここで、何してる?」
と、やってきたのは日和だ。

大賀と話ながら携帯で
日和に連絡した。
墓、大賀、一華とだけ····

「哲也さん、
ありがとうございます。」
と、言いながら
俺の腕の中の一華の頭を撫でる日和
「早かったな。
   飛ばしてきたか?」
「それは、秘密です。」
「くすっ、まぁ、いいや。」
と、言いながら
俺は木陰を見つけて
一華ちゃんを抱いたまま入る。

そんな俺をチラリとみて
日和は、大賀に向き合い
「父の墓に来ることは
遠慮してほしいと言ったはずだが。」
「それが、久しぶりにあった
友人に言う言葉か?」
「友人?お前がか?
それは、錯覚だ。

二度とお前の顔など
見たくない。

二度と一華にも近くな。
法的に手段にでるぞ。

俺は、まだ力がないが
哲也さんや内の所長を
敵に回すと二度と日本の地は
踏めないぞ。
これは、はったりでもなんでもない。」

「なぜだ?なぜ、そこまでする?」
と、なにも知らないお気楽な大賀は、
そう日和に向かって言っていた。
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