お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~

「ちょっと、拓海ったら……」

 カッと熱くなった頬を、両手で隠す。耳まで熱くなっているのがわかる。

 いくら一線を越えても、好きな人にこうして触れられたら平静ではいられない。うろたえている私を見て、拓海がくすりと笑った。

「なんだよこれくらい。もっとすごいことだってしてるのに」

「……それはそれ、これはこれ、なの」

 赤くなった顔を間近で見られるのが恥ずかしくて、つい両手で隠してしまう。

「そんな可愛いことするなよ……」

 あっけなく外され、拓海に両腕を掴まれた。


 抵抗する間もなく、唇を食まれる。いつものように啄むようなキスからではなく、拓海は、最初からその先を予感させるような激しいキスをした。

「……ん、ふぅ」

 差し込まれた舌が、私を見つけ、絡みつき、丹念に味わう。私がキスに溺れていると、ちゅっと軽くリップ音を立てて拓海が離れた。

 ただただ拓海に翻弄されていたのに、彼が離れてしまうと途端に心細くなる。私はどれだけ、欲張りになってしまったのだろう。


「夏美、甘い」

「……っ!」

 もの欲しそうな顔をしていたのかもしれない。拓海は私を見てふっと微笑むと、自分の唇の端をぺろりと舐めた。

 まるで獲物を見つけた獣のよう。あまりの色っぽさに、くらくらしてしまう。


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