お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~
ああ、やはり私は拓海を拒めない。
「……夏美」
熱っぽく擦れた声で、私の名前を呼んだ。私を床から引き上げ、ソファーに柔らかく押し倒す。拓海が私の上着の裾に手をかけたそのときだった。
ローテーブルの上に置いていた私のスマホから、メッセージ受信の通知音が鳴った。
「ごめん、拓海……」
「ただのメッセージだろ、ほっとけ」
「でも……」
「ほっとけって」
構わず拓海がその先に進もうとすると、今度は立て続けに通知音が鳴る。
一体誰? ひょっとして誰かになにかあったの?
それどころではなくなった私は、のしかかっていた拓海の体を押しのけ、彼に謝った。
「拓海、ほんとごめん!」
「わかったよ……」
私に根負けしたのか、それとも気がそがれてしまったのか。拓海はしぶしぶ私から体を離し、隣に腰掛ける。私は乱れた服をさっと整え、スマホを手に取った。
「えっ、聖司さん?」
思ってもみないことに、メッセージは聖司さんからのものだった。IDの交換だけして、もう何年も使っていなかった聖司さんとのルームに、メッセージが入っている。
「……園田さん? 夏美、あいつとIDの交換してたの?」
拓海の声のトーンが、低く険しくなる。彼を見ると、眉間にぐっとしわを寄せていた。
拓海ったら、そんなに聖司さんのこと苦手なの……?