お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~

「……わかったよ」

「よかった。拓海ありがとう」

 拓海は納得はしていないふうだったけれど、いいと言ってくれた。ホッとしてつい彼に飛びついてしまう。拓海は私に応えるように、ぎゅっと抱きしめ返してくれた。


「不用意にあいつに近づくなよ」

「聖司さんは主催者だよ? 私なんかと話す暇なんてないって」

 そんなことを言う拓海が珍しくて、つい噴き出してしまう。拓海ったら、本当に聖司さんのことが苦手みたい……。


「それが終わったら、その日は一緒に食事に行こう。俺もたぶん仕事だから、そのまま迎えに行く」

「ほんと? 嬉しい!」

 そんなご褒美があるなら、私も頑張れる。


「もうあいつの話は終わり。夏美、眠くなるまで映画でも観よう」

「うん」

 さっきみたいに触れ合うのもいいけれど、こうして拓海と何気ない時間を過ごすのもいい。

 拓海から体を離して隣に座り直すと、「そうじゃなくて」と言いながら、拓海が私の肩を抱き寄せた。彼の肩にもたれかかり、テレビの大きな画面を見つめる。

 私よりも少し高い拓海の体温に安心するし、やっぱりどきどきもしてしまう。


「……え?」

 なんて思ったのも束の間、突如としてテレビに映し出されたのは、私が最も苦手とするホラー映画だった。しかも、劇場公開時に怖すぎると評判になっていたやつだ。もう配信されてたの!?

「たっ、拓海。ごめん、こんなのムリムリムリ」

「ちょっ、暴れるな。もっと俺にくっついとけって」

 にやついた顔で、私を抱き寄せる。怖がる私が面白いのか、どんなに嫌だと言っても、拓海は映画を変えてくれないそうにない。

「やだーっ、怖い! 怖すぎて死ぬ」

「こんなことで死ぬかよ」

 結局、怖くてぎゃあぎゃあ騒ぎながらしがみつく私を、拓海はけらけら笑いながら見ていた。


< 124 / 223 >

この作品をシェア

pagetop