お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~

 佐奈さんの言葉に驚いていると、玄関のドアが開く音がした。

「あ、拓海が帰ってきたんじゃないですか?」

「そうかも」

 私が出るより先に、こはるが玄関に走っていく。

「おっ、ただいま。いいこにしてたか~」

 玄関に向かうと、拓海がこはるを抱き上げて、撫でまわしていた。そんな拓海のことを、なぜか佐奈さんはちょっと冷ややかな目で見ている。

「おかえりなさい。佐奈さんいらしてるよ」

「ああ。久しぶり佐奈」

「おじゃましてます」

「そうだ、これ」と佐奈さんは拓海の前に紙袋を差し出した。

「これなに?」

「日本酒よ。拓海が前に好きだって言っていたものを、湊人さんが取り寄せてくれたの」

「えっ、わざわざ?」

 拓海はこはるを床に下ろすと、佐奈さんから日本酒の入った袋を受け取った。

 紙袋の中には、新潟の有名な日本酒が入っていた。ずっと暑かったし、二人で飲むときはビールがほとんどだったけれど、拓海は日本酒も好きなんだ。そんなこと、知らなかったな……。


「兄さんにありがとうって伝えておいて」

「ええ。でも拓海も職場で会うでしょう? 直接言ってあげて。その方が喜ぶと思うわ」

 そんなことを言いながら、佐奈さんはもう帰り支度をしている。


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