好きなんだから仕方ない。
ただ、何より今はクロエラの最後の言葉が気になる。元の体に戻りたいと望んでいない。身勝手な私を恨んでいないの?

「クロエラ・・・?その、怒ってないの・・・?私が・・・体を変えてしまった事・・・」

「エイミア様からの贈り物を喜ばぬ理由がどこにあると言うのです。それに、全く同じ生き物などこの世界には存在しません。世間が作り上げているだけで普通の人などいないのです。この事実の何に怒れと言うのですか?」

「パルドメールさん。あんた、怒る対象を間違えてねぇか。確かにエイミア様は無意識の内とは言えど人を怪物に変えてしまった。それは魔女の世界では罪深い事なのかもしれねぇ。でも、先にこっちだろ」

振り向いて顔を見せてはくれなかったけれど、クロエラの声は嬉しそうに笑っていた。そして、クロエラの言葉を待っていたかのようにヅヌダクが部屋の中に入ってきた。
抱き抱えていた子供を下ろすと背中を押したヅヌダクの表情は一瞬だけ険しくなった。まるで、部下の不祥事を叱る時のように。
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