好きなんだから仕方ない。
下ろしてもらった子供はクロエラを見てはそらしてを繰り返し、声になっていない言葉を口を動かしながら喋っていた。何かを言いたい事だけは分かるからとしゃがんだ私を見つめると、子供は涙を溜めてヅヌダクに連れてこられた理由を話してくれた。

「その人を刺したの、僕なんだ。エイミアちゃんは人の事をすぐ信じるから。大人の男は皆信用できないから。だから騙されてるんだって。だからっ、皆で守らなきゃってっ。本当のお母さんを捜してくれるってっ、エイミアちゃんが約束してくれたからっ」

「・・・ありがとう。守ってくれて」

「そのお心遣い、感謝致します」

頭を撫でるとその子は大声を上げて泣きながらごめんなさいと、私の隣にしゃかんだクロエラに伝えてくれた。私のために、世間知らずな私を守ろうとして人殺しをさせてしまったんだ。
クロエラが亡くならなかったからまだ良かったけれど、もし亡くなっていたら。誘拐よりも酷い心の傷を負わせてしまったんじゃないのかな。
< 115 / 260 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop