好きなんだから仕方ない。
また振り向かれたエミィ様は微笑んでいた。その笑顔はまるで自分を変えてくれた事を感謝していると言っているようで俺たちは照れ臭かった。でも、鼻が高いと思ったのも事実で何とも言えない感情に体が熱くなった。

「でも、魔界に行けばお前は!」

「パドメ、落ち着いて」

「落ち着けるか!お前の生死が掛かっているんだぞ!」

全ての時が止まった。そんな気がした。誰一人としてエミィ様に死んでもらおうと言う者はおらず、俺の思考も停止していた。誰一人としてその後の言葉を口にしようとはしなかった。
エミィ様に生きていてほしいと伝えて止めようとしているのはパドメ様だけだった。他の神は止めようとも進めようともせず、卑怯にも黙って経過を観察していたんだ。
自分がそれでも行こうと言ったせいで彼女が死んだと思いたくないから?自分が止めたせいでこの世界を危険な目に遇わせたくないから?一番不憫なのはたった一人だけ、他の人の事を考えて動こうとしている彼女自身だろ。
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