好きなんだから仕方ない。
ウデルク様の問いかけにエミィ様は俺たちの方を見た。眉を下げ、心細そうな表情で俺たちを見ていた。だから、俺は一度だけ頷いた。その考えを俺は尊重するという意味を込めて。ステアダは口角を上げて一度、ゆっくり瞬きをしたようだ。トワは自分の手を握って親指を上に突き出して笑顔を見せた。そんな俺たちの意思を読み取ってくれたのか、エミィ様は深呼吸して自分の意見を述べた。
きっと、神として手本となるような返答ではないのだと思う。神が正義、神が全てだと言うのであれば、どんな影響を及ぼすか分からない魔界の消滅を選ぶべきだ。メルシオ様の所で見た日記には負の影響しか及ぼさないと書いてあったし、無駄に命を落とさせるべきではない。

「和解なんて出来ない可能性の方が高い事も甘い考えだって事も分かってる。でも、幸せの無い悲しみを減らしたいの」

「幸せの無い悲しみ?」

「私は皆に教えてもらったの。悲しみには幸せが隠れている事があるって。だから私は行くよ。欲も自分勝手な願いもそこにしかない希望があるって信じたいの」
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