好きなんだから仕方ない。
俺はただ、黙ってみているだけ。彼女がこれからどうして行くのか気になって仕方なかったから。この城を出て普通の女に戻ってしまったら、俺たちの任は解かれてしまう。もう二度と彼女に仕えられなくなってしまう。

「あの、エイミア様」

「大丈夫。次の王座が決まるまではちゃんと王族としてここにいるから。・・・ふふっ、皆の匂いがする。どこに隠してたの?」

「あっ!それは!・・・申し訳ございません!」

俺の心配を名前を呼んだだけで把握してくれる。でも、きっとそれは愛している故の心配だとは思っていないのだろう。
上着の匂いを嗅いで笑って和ませてくれる。自分自身、そんな心の余裕もないはずなのになぜこんな時まで俺たちの事を気遣うんだ。
それが彼女の良い所と言ってしまえばそれまでだ。でも、少し弱い所を見せなさすぎる。
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