好きなんだから仕方ない。
次男と国王が招いた事実を謝罪した。頭に血が上って怒鳴り散らす所だったが、エイミア様が怒ってもいないのに先に口を出す訳にはいかない。
身勝手な理由で親の死に目に会えなかったエイミア様の気持ちを考えた事があるのだろうか。親の敵である者と一緒に生きてきた事実が与える精神的苦痛の大きさを考えた事はあるのだろうか。

「あなたのような役立たずより価値のある息子の汚点を隠すのは親として当然でしょ?あなたの両親も息子のために死ねた事を光栄に思うべきだわ」

「・・・分かりました。では、私も利用させて頂くと致しましょう。反論はありませんね?」

「良いだろう。お前の頼みなら」

奥様の言葉に胸ぐらを掴みたくなったがそれも出来ない。相手は国王の妻。執事である俺が気安く触れる立場じゃない。
せめて彼女が怒ってくれたなら良かったのかもしれない。苛立ちも少しは和らいだのかもしれない。でも、怒る事はなかった。寧ろ、まだこの城に居座ると言い出したのだ。
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