好きなんだから仕方ない。
聞いてしまったら最初の試練でお世話になった人々にちゃんとお別れを言えない気がしたから。パドにかけなくて良い迷惑をかけたはずだから。

「じゃあ、良いんだね？」

「うん。これから宜しく」

手を繋いでくれたパドの問い掛けに強がる事しか出来なかった。本音を言えば泣き崩れてしまうから。クロエラに会いたいと引き返してしまうから。
そうやって、自分の心を嘘で保護して国の外へ踏み込んだ。これでもう、本当に戻れないのね。繋がれた手に力がこもる。
生まれ故郷はそこまで遠くないらしい。野宿をすれば三日で着けるそう。何でそんなに近いのだろう。そう思いながら繋がれた手を離さないように歩いた。離してしまえば引き返してしまう。それに、この砂煙のせいではぐれてしまう。
ただ、パドの言った三日が三晩の間違えであった事は故郷に着いてから知った。野宿をしながら進めば四日目の昼に着く。だから野宿は三日という意味で言ったんだ。
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