好きなんだから仕方ない。
魔女の髪で作られた上着はまたひとりでに動いて木の板で作られた看板のような物のそばに来るよう身振り手振りで示してきた。一人で動けたんだと思いながら子供たちと顔を見合わせた。

「行っても良いの?危なくない?」

「・・・大丈夫。あの子はきっと大丈夫。でも、一応私から離れないで。巻き込んでごめんね」

子供たちは歩きづらいくらい私にくっついて一緒に近付いてくれた。まぁ、魔女が全滅して魔法しかなくなったこの世界で勝手に動く上着を見たら恐怖でしか無いでしょう。仕方のない話よね。
立ててあった木の板にはこの町、私の故郷への郵便物はあの男、パドの所へ持ってくるようにと書かれてあった。両親の手紙の住所をクロエラたちに教えていたし、もしかして皆の手紙は全部パドの所へ?外部との接触を絶たせるためにわざと渡さないようにしていたの?じゃあ皆は私を見捨てた訳では無かったかもしれないって事?
地図にない町だし、パドの言葉を疑わなかった私も悪い。向こうだけのせいには出来ない。でも、魔法ではなく魔力が使える者が私だけしか残ってないと知っていたら誰でも私が両親の子供だと分かったって事?
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