今夜、あなたに復讐します
 



 夏菜が出ていった扉を振り返りながら、指月が言った。

「さすが道場仕込みなので、挨拶などは教える必要はないんですけどね。
 ときどき丁寧すぎて、客になにごとかと思われるときがありますね」

「……そうか」
と有生がちょっと考え事をしながら言うと、

「『明日の出張は長いから、あまり顔も見られないので、俺が出ていく前に早く来て顔を見せてくれ』
とか言ってみたらどうですか?」
と指月が言ってきた。

「……なんの話だ」
と有生は指月を睨む。

 いえいえ、と言って、回ってきたファイルをデスクに置く指月に、
「お前はいつもそういうことをしれっと言ってるのか」
と訊くと、

「言えますよ、別に。
 相手に気がないときには」
と言ってくる。

「……気がないときには言わなくていいんじゃないか?」

「ま、そうなんですけどね」
と言って、指月はあっさり出て行った。

 ひとりになった社長室で、有生は考える。
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