嘘恋~キスから始まる君との恋~
「いや、付き合うってそういうことじゃ…」
「キスしといて何言ってんの」
思い出して、急にボンと顔が赤くなる。
「照れすぎ」
先輩は不意に目を細めて笑う。ドキッとした。
慣れないな、こういうのは。
動物園の中を手を繋いで巡りながら、他愛ない会話をする。質問のことなんて忘れていた。
シンプルにデートを楽しんでしまっていた。
「何も質問できていない…!」
「楽しそうだな、碧。俺といるの、そんな楽しい?」
「…なんかそう聞かれて、うんって答えるの悔しいです」
「ふんっ、天邪鬼な奴め」
動物園を出ると、丁度お昼時。
「菅田先輩、お昼ご飯どうします?」
「ファミレスでいい?」
「席空いてるといいですけどね」
「まあな」
さりげなく、手繋ぎは続行。
「なあ」
「はい?」
「そろそろ菅田先輩って呼ぶのやめないか」
「なんて呼べばいいんですか?」
「蒼宙って」
「蒼宙先輩?」
「うわやば」
「笑わないでくださいよ」
言い出しっぺに笑われる。でもどこか照れたように。
その日のデートはそんな感じで終わった。