わたしにしか見えない君に、恋をした。
愁人は弟だけどあたしよりもずっとずっと大人な考えを持ってるし、あたしよりも何もかも一生懸命だ。

特別昔から仲が良かったわけではないかもしれないけど、弟は弟だ。

大切な家族のことを悪く言われて黙っていられない。

「あたしは……」

「ん?」

喉の奥にある言葉を言っていいのかな……?

『今みたいに思ったことを口に出せばいいんだって』

湊の言葉とあの温かいまなざしを思い出す。

ギュッと拳を握り締めて息を吸い込んだ。そして、先輩の目をまっすぐ見つめた。

「あたしはインドア派を変える気はありません」

「え?」

「それと、愁人は確かに姉のあたしから見てもサッカーバカだと思います。でも、愁人の頑張りをあたしは知っています。だから、愁人をバカにしないでください」

「あー、いやいやいや、そんな本気になんないでって!さっきのも全部冗談だから。冗談!!」

先輩は必死になって弁解する。

言いたいことは山ほどある。でも、あたしが先輩の機嫌を損ねれば、先輩の怒りの矛先が愁人に向かないとも限らない。

「って、なんかすみません。偉そうなこと言っちゃって」

謝ると、先輩は首を横に振った。

「いや、いいって。全然気にしないでよ!」


先輩はそう言っていたけれど、その後の空気は微妙であたし達はすぐに店を後にした。

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