わたしにしか見えない君に、恋をした。
「何?繋ぐほうの手って決まってるの?」

でも、この間は左だった気がする。

そのとき、湊の右側を猛スピードの自転車が通り過ぎていった。

「別に。ただなんとなく」

「変な湊」

「うるせぇ」

くすっと笑うと湊が眉間にしわを寄せる。

先輩に体を触られたときは嫌で仕方なかったのに、今はすごく心地いい。

あたしは湊とともにカフェに足を踏み入れた。


お店の中はほぼ満席だった。

辺りにはコーヒーの香ばしい匂いが漂い、気持ちを落ち着かせてくれた。

食事を済ませ、注文していた食後のコーヒーに鼻を近づける。

「コーヒー独特のいい匂いだね」

「マジか。ちょっと、手繋いでいいか?もしかしたら、流奈を通して匂いがわかるかも」

湊に手のひらを差し出すと、湊はあたしの手をギュッと握った。

「すげー。マジでいい匂い」

「飲んでみる?って聞きたいけどここじゃちょっと無理だよね?」

「だな。カップが宙を浮いたらマズイしな」

「あはは!!だよねっ!!」

湊があたしから手を離す。

隣の席のおじさんがケラケラ笑うあたしを驚いたように見つめた。
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