わたしにしか見えない君に、恋をした。

そうだ。みんなには湊の姿は見えないんだった。

あたしにはこんなにハッキリと見えているのに。

会話も交わせるし、手だって繋げる。

コーヒーの匂いもわかると湊は言っていた。

それなのにどうして……

どうして湊はこの世界に存在しないんだろう。

どうしてなの……?

いつか。いつか湊は……あたしの前から消えてしまうんだろうか。

こうやって一緒にいられる時間は、

いったいあとどのぐらい残されているのかな。

「……――流奈、どうした?」

「あっ……ごめん。なんでもない」

不思議そうな湊に笑いかけ、コーヒーを口に含む。

じんわりと苦みが口の中に広がる。

ちらりと正面に座る湊に何気なく視線を向ける。

「ん……?」

湊はテーブルに肘をつき、手のひらを顎に乗せて少しだけ目を細めてあたしを見つめていた。

至近距離で目があって思わず声を漏らす。

「な、なに?なんか顔についてる?」

「ていうか、流奈って可愛い顔してんだな」

「……はいっ!?」

「いや、今までこんなにマジマジと顔を見たことなかったから。眼、カラコン入れてるみたいに透き通ってて茶色いのな」

「や、やめてよ!見ないで!!」

動揺で震える手でカップをソーサーに戻して顔を隠そうとした時、湊があたしの手首をギュッと掴んだ。

温かくて大きな湊の手のひらの熱が体中に伝わって心臓が波打つ。
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