その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
目が合って初めて私の存在に気付いたらしい大森くんが、大袈裟にこっちを指差して「おぉ」と声には出さずに口だけパクパクさせる。
あぁ、気付かれた。
無視してパソコンに視線を移したけれど、絶対あとで絡んでくるに違いない。
そしてその予感は、何時間か後に現実のものとなった。
終業時刻を30分ほど過ぎてからノートパソコンを閉じようとしていると、どこいたのか、それまで姿の見えなかった大森くんが、ずかずかと私のほうに歩み寄ってきた。
「ひさしぶりだなー、碓氷。相変わらず仏頂面で仕事してんだ?」
数年振りに顔を合わせる同期に対する挨拶とは思えない不躾な言葉に顔を顰める。
不快感しか出していない私の顔を見た大森くんは、なぜか楽しそうに明るくけらりと笑った。
「碓氷のそのしかめっ面見るのも懐かしいな。会うの何年ぶりだっけ?」
「さぁ?そちらも相変わらずお元気そうで」
なるべく長時間の会話は避けたくて、目線を合わせず淡々と答える。
だけど大森くんは、私の反応などお構いなしに、勝手にペラペラと自分の近況を話し始めた。