その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
あぁ、そういえばこの人。新入社員の頃から、私の反応なんて気にしない人だった。
本社にいる私たちの同期がどうだとか。
誰と誰が結婚したとか。誰のところに最近子どもが生まれたとか。
私がどれだけ興味なさげな相槌を返そうが、大森くんの話は止まらない。
「それでさ、実は俺も3ヶ月後に結婚するんだ」
「へぇ、それはおめでとうございます」
「いやー、ありがとう」
ものすごく棒読みで祝辞の言葉を述べたのに、大森くんが嬉しそうにニヤニヤ照れ笑いする。
実際に、本当におめでたいことではあるんだけれど。
せっかく帰ろうとしていたところだというのに。ここに至るまでの話が長すぎる。
遠い目をしながら心を無にしかけたとき、何を思ったのか、大森くんが突然私の肩をぽんと叩いた。
「なぁ、碓氷。ここでずっと話してるのもなんだから、どっか飲みにいかね?」
「え?」
思いきり嫌そうに顔を歪めたはずなのに、大森くんはにこにこと笑っていて。
よもや、私が誘いを断るなんて思ってもいない様子だ。