その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「一時滞在用のマンションだと、キッチンも小さいから自炊も面倒だし。今日の夕飯どうしようかと思ってたんだよね」
「え?私は家で……」
「碓氷はまだ独身なんだろ?ちょうどいいじゃん。俺、カバン取ってくるわ」
「ちょっと待って……」
こっちの都合も聞かずに颯爽と去って行く大森くんの背中に手を伸ばす、私の頬が引き攣る。
ちょうどいいって、何?
まったくもって、ちょうどよくないんだけど。
大森くんに向けて伸ばした手が、すとんと脱力する。
大森くんは新入社員の頃から明るくて、誰に対しても明け透けだけど、人をまとめる力があって。
そういうところが割と社内で好かれている。
だけど、私はそういうのが苦手だ。
同じ空間にいるだけで、精魂を吸われ尽くすんじゃないかと思うくらい疲れる。
「じゃぁ、行こう!」
カバンを持って戻ってきた大森くんに、強引にオフィスの外へと連れ出される。
断って帰るタイミングを完全に失った私は、仕方なく彼の背中を追いかけた。