その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「それ、もっと早く言えよ」
「え、ごめんなさ……」
広沢くんが急に大声を出すから、ビクリとする。
「すぐ降りるから!そのまま、そこで待ってて」
「え、……」
私の返事を待たないままに、広沢くんが通話をブチッと切った。
待っててって言われても……
通話の切れたスマホを見つめていると、5分もたたないうちにマンションのエントランスから広沢くんが飛び出してくる。
「れーこさんっ!」
必死の形相で駆け寄ってきた広沢くんは、Tシャツにスウェットパンツというラフな部屋着姿で。乱れた髪が濡れていた。
「もしかして、お風呂あがり……」
最後まで言う前に、広沢くんがガバッと私を抱きしめる。
洗い立てのシャンプーの香りが、ふわっと鼻先を掠め、広沢くんの濡れた髪が首筋を冷やした。
広沢くんの濡れた髪の毛の先についた雫が、ポタリと数滴地面に滴る。
そのときに見えた裸足の足元は、片方が仕事用の革靴、もう片方は普段用のサンダルで。左右がチグハグだった。