その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―


そっと広沢くんの頬に手を添えると、彼がようやく私のことを見てくれた。


「ごめんなさい」

「なにが?」

まだ若干不服げな広沢くんに笑いかけると、彼の首の後ろに両腕を絡める。

そのままきつく抱きしめると、広沢くんが腕の中で身じろいだ。


「いい歳して、意地悪言ったと思ってる。広沢くんなら、なにも言わなくても私の気持ちくらいわかってるって。そんなふうに、勝手に思いあがってた」

「自覚あるんだ?」

クスッと笑った広沢くんの頭が揺れて、濡れた髪が私の頬にあたった。

風邪をひかなければいいけど…と思いながら、風に晒されてすっかり冷たくなった広沢くんの髪に手を差し入れる。


「そりゃ、まぁ。客観視して冷静に意見するのは得意だけど、自分の気持ちをそのまま誰かに曝け出すのは苦手なの」

ひんやりと冷たい広沢くんの髪を指で掬いながらつぶやくと、彼の腕が私の背に回った。


「知ってます」

広沢くんがそうつぶやいて、私を抱きしめ返す。


「でも来てくれたから、もういいです」

耳元でささやかれた広沢くんの、甘く痺れるような掠れた声に、身体の芯がゾクリとした。


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