その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―





約束の土曜日の夜。

広沢くんは17時半に、マンションの下まで車で迎えに来てくれた。

早めに外に出て待っていた私に嬉しそうに笑いかけてくれた広沢くんだけど。なぜか今日の彼は、あまり私と目を合わそうとしない。

そのことが、妙に私を不安にさせた。 


「車だとお酒飲めないじゃない」

「いいんです。今日は、お酒の力は借りずにちゃんと話がしたいから」

ハンドルを握って正面を向いたまま、少し頬を緩める広沢くんに、ますます不安が募る。

お酒の力を借りずに話したいことって、まさか……
こうしてふたりで会うのは今夜が最後になるとか、そういう類のことなのだろうか。

うつむいて、膝の上でギュッと掌を握りしめていると、広沢くんが声をかけてきた。

「れーこさん、どうかしました?」

「え?」

「なんかさっきからずっと下向いてるから」

赤信号で停止したタイミングで、広沢くんがようやく私の顔をまともに見てくれる。

そんな些細なことに、胸が苦しくなった。


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