その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「れーこさんは子どもみたいって思ってるかもしれないけど、あの新人にれーこさんがどう見えてるかなんてわかんないじゃないですか」
「何言ってるの?」
広沢くんが、呆れ顔で見上げる私の頬に手を添える。
「あいつだって、れーこさんとふたりきりになったら、会議室のカギかけて、ちゅーしてくるかもですよ?」
「そんなわけないじゃない」
ていうか、それはあなたが言うことじゃないよね。
人のことを押し倒しかけてるうえに、付き合うきっかけにもなったシチュエーションまで持ち出してくる広沢くんに呆れる。
「ほら、早く片付けて戻らなきゃ。あなた、今日から新人の教育担当」
「れーこさん、キスしたい」
「だから、仕事中」
「でも、したい」
私がどれだけ押し退けようともがいても、プライベートの顔で私を見つめる広沢くんが全然言うことを聞いてくれない。