その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―


広沢くんに詰問するようにみせかけて、何気にものすごい悪口言われているような気がする……

美耶子の話を聞く私の目が遠くなりかけたとき、広沢くんな手が膝にのせていた私の手に重なった。


「美耶子さんが心配されるのも、俺なんか頼りないって思われているのもわかります。俺としても、本当は転勤に合わせて無理やりにでも礼子さんを一緒に連れて行きたいけど……礼子さんは中途半端で仕事を投げ出せるタイプじゃないですから。そんな彼女に提案した、俺からの最大限の妥協案です」

広沢くんが堂々とした態度で話し始めたのを見て、美耶子が眉を寄せて口を閉ざす。


「礼子さんのどこがいいかは、ひとことで言うのは難しいんですけど……」

チラッと私を振り向いた広沢くんが、目を細めてそっと微笑む。


「礼子さん、職場では上司の前でも部下の前でもずっと完璧だったんです。誰に対しても整然としてて、厳しくて、カッコよくて。周りに冷たいって思われるくらい、私情を挟まずに仕事ができて。だから、誰にも頼らなくたって平気だって、周囲に誤解されちゃうんです」



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