その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「もちろん、ご挨拶させていただきます」
広沢くんはそう言って立ち上がると、母の仏壇の前に座った。
私もその隣に正座して、母の遺影を見上げる。
いつも優しく微笑んでいる母のその目は、両手を合わせて頭を低くする広沢くんのことをジッと見つめているようだった。
「私が中学生で、お姉ちゃんが高校生だったときかな?お母さんが病気で亡くなったの」
私たちの少し後ろに座って手を合わせていた美耶子が、おもむろに口を開く。
「お姉ちゃん、小さい頃から我儘とかあまり言わないいい子だったんだけど。お母さん死んでからは余計に自分のことを抑えて、周りにとってなにがベストかばかりを考えるようになっちゃって。結婚だって、今までチャンスなかったわけでもないのに、変に相手の気ばっかり使って逃すしねー」
「美耶子」
広沢くんと同時に振り向くと、美耶子が泣いてるみたいに笑っていたからハッとした。