その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「お母さん、きっと安心してると思うよ。だから広沢くん、お姉ちゃんのこと、よろしくお願いします」
美耶子が膝の前に手をついて頭をさげる。
その姿に驚く私の横で、広沢くんがくるっと美耶子に向き直って、手をついて丁寧に頭をさげた。
「はい。礼子さんとのこと、認めていただきありがとうございます」
「礼ちゃーん」
ずっと私たちの様子を窺いながらうずうずしていた乃々香が、ついに我慢しきれず駆けてくる。
乃々香は私の膝に座ると、甘えるように私を見上げて首を傾げた。
「ねぇ、礼ちゃん。お願いしますってしたから、もう礼ちゃんと広沢くんは結婚できた?」
乃々香が真剣な目をして訊ねてくるから、思わず笑ってしまう。
「それは、まだこれからだけど」
「え、まだなの?」
「でも、すぐかな……」
ガッカリした顔をする乃々香の髪を撫でながら、私は小さくつぶやいていた。