その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「そんなことないですよ。しっかり引継ぎもしましたし。私が抜けた穴なんて、すぐに簡単に埋まります」
「どうだろうな」
私が抜けたくらいで、「大変だ」とか「どうだろう」とか。企画部長の口からやや弱気な発言が溢れるとは思わなかったから驚いた。
企画部長は、私の仕事に対してはそれなりに評価してくれていたけど、私個人のことはあまり好きではなかったと思うから。
態度の可愛くない、生意気で厄介な部下だっただろう。
だけど、最後の最後で別れを惜しんでくれるくらいには気にかけてもらえていたのだと思ったら、感慨深いものがある。
「わざわざ言われるまでもないだろうが、向こうでもしっかりな」
「はい。ありがとうございます。長い間、お世話になりました」
励ますように私の肩をぽんと叩く企画部長に、心を込めて深々と頭を下げた。