その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
新城さんのほうを見ると、彼女は彼女でうつむいている。
どうしたものかと思いながら視線を巡らせていると、企画部長のデスクの横のホワイトボードに目が留まる。
どうやら、今日は1時間後に広沢くんが取引先に外出するらしい。
チラッと彼のほうに視線を向けると、隣の桐谷くんに何かの業務を教えているところだった。
たまには、広沢くんの外出に新城さんを連れて行ってもらおうかな。
勝手にそう決めると、私は新城さんに向き直った。
「新城さん。落ち着いたら、今日は取引先に挨拶に行く広沢くんに同行してもらってもいいかな?まだ、誰にも同行したことことないよね?」
私がそう言うと、新城さんが顔を上げて目を見開く。
それからちょっと嬉しそうに目を輝かせるから、なんだか単純で可愛いなと思った。
「え、でも。新城さんはまだダメですよ。何もかも全然わかってないし……」
私の言葉を聞いた秦野さんが、前のめりに割り込んでくる。
首を振ってそれを制したら、彼女が不満そうに口を噤んだ。