その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―



「秦野さん、よかったら席交代しましょうか?」

歩み寄ってきて秦野さんの斜め後ろに立った菅野さんが、こそっとささやく。


「え?どうしてですか?」

「だって。ねぇ、秋元くん、碓氷さん」

秦野さんが不思議そうに首を傾げると、菅野さんが口元に笑みを浮かべて何か同意を求めてきた。

なんとなく菅野さんの言わんとすることがわかって苦笑いを浮かべる。

共に同意を求められた秋元くんも、何も答えずにすんっと秦野さんから顔を逸らすだけだった。


「さっきから新城さんにずっと絡まれて、広沢くんも困ってるみたいだから。秦野さんが助けてあげたほうがいいんじゃないかな、って」

私と秋元くんが何も言わないので、菅野さんが半ば強引に秦野さんを立たせる。


「どうして私が……」

「ほら。遠慮せず、行っちゃったほうがいいですよ?」

にこにこしながら秦野さんの背中を押す菅野さんは、『広沢くんと秦野さんが付き合っている』という噂を信じているんだろう。


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