その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―



だからといって、もし『広沢くんが本当は私と付き合っている』と今ここで公言したとしても、きっと誰も信じないだろう。

実際に、広沢くんと秦野さんが並ぶとお似合いだから。

ついため息がこぼれそうになるのを誤魔化したくて、グラスに残っていたビールをぐっと飲み干す。

その味が、なんだかいつもより苦く感じた。


「広沢さんと秦野さんが付き合ってるって、ほんとなんですか?」

空っぽになったグラスを静かにテーブルに置いたとき、桐谷くんが隣から少し身体を前に乗り出してきた。


「ほんと、っていうか。結構前から、みんなそんなふうに噂してるよ。あのふたり、入社したときから仲が良いって。ね、碓氷さん?」

菅野さんが小さく首を横に傾けながら、私に同意を求めてくる。

その問いかけに、肯定も否定もできない私は、彼女を真似るように首を横に傾けて苦笑いした。


「少なくとも、秦野さんは広沢さんのこと好きでしょ」

秋元くんが、新しく注文したビールのグラスの縁を見つめて指でなぞる。

その表情が、なんだか物憂げだ。

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