その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「あぁ、俺はもう大丈夫です」
「ウーロン茶頼んどく?」
「じゃぁ、そうします」
「秋元くんと、菅野さんは?」
「碓氷さん、俺はレモンサワーで」
向かい側に座るふたりにドリンクメニューを見せながらそう訊ねたとき、近くにはいないはずの人の声が聞こえてきたからドキリとした。
顔を上げると、秋元くんの肩に手を載せた広沢くんが、怖いくらいの作り笑いで私ににこりとしてみせる。
それから、秋元くんを押し除けるようにして菅野さんと彼の間に割り込んできた。
「ちょっ、広沢さん。いきなり、どうしたんですか?」
「別に。せっかくの新歓だし、桐谷との親睦も深めたほうがいいかなーって」
「いや、広沢さん。桐谷くんの教育担当だし、デスクも隣だし、いつでも親睦深められるじゃないですか」
「職場と飲み会じゃ、また違うだろ」
「ていうか、広沢さん。狭いんですけど」
「じゃぁ、秋元が向こうのテーブル移動しろよ」
眉を顰める秋元くんを、広沢くんが笑いながら肘で押しやる。