その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
なんだかわけもなくそわそわして、テーブルの上に置いた両手を組んでギュッと握って視線を落とす。
すると、私に笑いかけながら水の入ったコップを触っていた広沢くんの右手が、不意にこちらへと伸びてきた。
身体を乗り出すようにして腕を伸ばした彼が、テーブルの上で組んだ私の手にその掌を置く。
「何か話すことがあるのは、れーこさんでしょ?」
顔をあげると、広沢くんが少し切なげに目を細めた。
「手、大丈夫ですか?やけどしたって聞いた」
広沢くんに両手をそっと包むように優しく握られて、ドキリとした。
「大丈夫。ちょっとかかっただけで、全然たいしたことないから。それ、桐谷くんが?」
「桐谷じゃなくて、直接教えてくれたのは菅野さん。桐谷に、『片付け大丈夫だったか』って聞きにきて。それで、給湯室でのこと知りました」
「そう」
「れーこさんか桐谷が事情をちゃんと言ってくれたら、桐谷が始業にちょっと遅れたくらいでイラつきませんでしたけどね」
「やっぱり、イラついてたのね」
なんとなくそうかな、と思ったから、敢えて余計な言い訳はしなかった。
でも、やっぱりそうだったんだ。