真夜中まで、君とワルツを
頬に柔らかな感触がする。シンディがチャーリーの頬にキスをしたのだ。チャーリーの頬が別の意味で赤く染まる。

「ありがとう、チャーリー」

今にも泣き出しそうな声でシンディは言った。しかし、チャーリーが何かを言う前に「じゃあ踊ろっか」と手を掴まれてしまう。

クルクルとドレスをなびかせながらシンディは踊った。エスコートしながらチャーリーは笑顔を見せ、シンディも微笑む。二人は時計をそれから見ることがなかった。

ゴーン、ゴーン、ゴーン……。

低いような高いような鐘の音が響く。十二時の鐘は魔法が終わる合図だ。鐘が鳴った刹那、ワルツを踊っていた人々も演奏していた人々も消え、一瞬にして館の中は静まり返る。

煌めいていたシャンデリアも、新品のようだったカーペットも全てが元に戻っていく。チャーリーのタキシードも普通の服に戻っていた。そして、消えていく存在がいる。

「シンディ……」

シンディの体が透けていっていた。シンディとのお別れの時間なのだ。チャーリーの目から涙がこぼれ出す。そして、シンディを抱き締めていた。
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